聖夜の軌跡
部屋の扉を開けて出て行く秀。

行ってらっしゃい。

まともにその言葉を言えた日はない。


「あたしのバカ…」


することもないあたしは布団にもぐりこんだ。

頭に浮かぶのは秀のこと。

お父様と秀と家で雇ってる執事とかしか男の人なんて知らないけど、きっとほかの男の人を知ったとしてもあたしが秀を好きなのは変わらないと思う。


いつの間にか眠っていたらしいあたしは、目が覚めてから思った。

「寒い」

ベッドから出て、大きな窓の淵に座った。毛布にくるまりながら。

「雪…」

もう暗くなったそこに、ひらひらと浮かび上がった雪。


思わず窓を開けて、手を伸ばす。


綺麗……



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