聖夜の軌跡
近づいてくる秀の顔。

思わず目を閉じる。


唇に暖かい感触……はなく、額に冷たい感触。

目をゆっくり開くと、秀の額があたしの額にくっついていた。


「……しゅ…秀?」

「やっぱり、熱があるな。熱測って」

体温計が渡される。男である前に、医者である秀に言われたらもう、言う事を聞くしかない。


ピピッと電子音が鳴った。

「え……」

そこに映った数字を見て唖然とする。

「37.8」

「俺がもっと早く帰ってくればよかったな…」

「ゴメン」とつぶやく秀。


秀の所為じゃない。


そう言いたいのに……
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