わたしはまた恋をする ~年下の彼~
『高橋』
そう書かれた表札の前で、私はじんわりと流れてくる汗をぬぐった。
北国とはいえ9月はまだ暑い。
チャイムを押そうかと躊躇している私に、
女の人の声が聞こえた。
「どちら様?」
驚いて振り返ると、優しそうな女の人が立っていた。
買い物帰りの様子で、たくさんの荷物を抱えていた。
この家に帰って来たのだから…きっと、彼女のお母さんなんだろう。
私はぺこっと頭を下げる。
逃げちゃ駄目だ。そう心の中で呟きながら。
「麻美ちゃんは、まだ帰っていませんか?」