気づかなければよかったのに

ある日、事務所に私だけ

彼が出勤してきた

「おはようございます」

「おはようございます」

…………………………。

今日ほど緊張した日はない

見られてるわけでもないのに

同じ空間にいるのが嬉しいはずなのに

残念ながら、今仕事中

いつものように彼がお弁当を注文表に書く

彼の字は好きだ

行書だけど見やすいきれいな字

ふと彼も気がついたのだろう

「…今日誰もいないんですね。」

いきなり話しかけられた

声した方に振り向くとあなたが真っ直ぐ私を見てた

せっかくの機会

目を見て話した

「はい。会議で…」

びっくりしたけど、なんとか答えた私

「あぁー…」

微かに笑って席に戻るあなた



初めて会話した

しかもあなたから話しかけられた

内容はどうあれ

その事実が嬉しくて

つい、心の中で微笑んだ

“話をするときちゃんと相手の目を見て話するんだ”

それから

私はキョトンとしてた

なぜ話しかけられたの?

あぁ…他に聞く人がいないからか…

たった5秒で終わった会話

今思うと、大事な大事な思い出の1つ

この思い出は出会ってからいつ頃の話だったかな

まだ1、2ヶ月だったかな

忘れちゃった

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