意地悪王子とお姫様
「……わかった」
黙って啓に着いて行った、あたし。
本当は、怖い。
ずっごく、怖い。
けどね、咲貴君が言ってくれた。
『辛くなったら、いつでもおいで?
俺が慰めてやるよ』
その言葉を思い出すだけで、少しホッとすることができた。
「ほら、あそこ」
誰もいない非常階段の所にひかるは、外を眺めていた。
「俺も行った方がいいか?」
啓はかなり心配しているようだった。
「大丈夫だよ」
強がって、そんなことを言った。
「…泣いて戻ってくんなよ?」
「泣かないってばぁ!」
そう言って笑うと啓は、安心したらしく教室に戻って行った。