意地悪王子とお姫様
「…本当、馬鹿だな」
――グイッ
「んわっ…!!」
腰に手を回して、すごい引き寄せられた。
そして、あたしの耳元で小さく囁く。
「それを妬いてるって言うんだよ、雨芽?」
「…………」
きっとあたしは、今窓から見える夕日より顔が赤いはず。
そのままゆっくりと顔が近づいて、唇が重なる。
あたしは、咲貴君の袖をギュッと掴んだ。
毎日他の子ともこんなことをしてるんだなんて考えたくなかった。
「…んっ…」
あたしだけを見てなんて、偉そうなこと言える立場じゃない。
その笑顔をあたしだけに向けてなんて、欲張っちゃいけない。
だから…、少しでも長く。
咲貴君に触れていたいと思った。