意地悪王子とお姫様
廊下に出ると同時に、咲貴君が教室に入るところだった。
「…あっ」
思わず声に出てしまう。
咲貴君は少し不機嫌そうな顔をして、すれ違いざまに耳元で囁いた。
「雨芽が浮気してるー」
「…なっ…、違うっ!」
あたしは振り返って、咲貴君に言った。
「……ふーん」
咲貴君は、すました顔をする。
「…違うもんっ…」
立ち止まって、咲貴君に訴えるあたし。
「また、お前かよ」
啓がうんざりした顔をして言った。
「…雨芽なんて、もう知らねー」
そう言って、咲貴君はニヤリと笑って教室に入って行った。
「なんでっ!待ってよっ!」
追いかけようとするあたしの腕は、啓に掴まれたままだった。