意地悪王子とお姫様
「…最近、元気ねーな?」
そう言って、咲貴君はあたしを抱き寄せる。
「元気あるょ…」
「ないくせに」
抱きしめる力が強くなった。
あたしもギュッと咲貴君のシャツを握る。
「ずっと…このままがいい…」
かすかな声であたしが言った。
けど、咲貴君には聞こえてたんだね。
「このままにしてやるよ?」
それを聞いて、笑顔になった。
スッゴい幸せなのに。
みんなが羨むくらい、みんなが怒るくらい。
あたしは、幸せ者なのに。
どうして、普通に幸せを噛みしめられないんだろう。
どうして、こんなに不安になるの?
紙くずに書いてあった言葉が頭から離れなくて…。
ただ今は、咲貴君から離れなくないと思った。