意地悪王子とお姫様
「雨芽、全然変わってないしっ!」
要君が人懐っこそうな笑顔で言う。
「…そ、そうかなー?」
「しいて言えば、もっと可愛くなった!」
「……気のせいだょ」
あたしは、恥ずかしくなって俯いた。
「そういう所、変わってねー!」
あたしをからかうように笑う、要君。
なんだか、懐かしい気持ちになった。
けど、あたしの後ろに目をやると顔つきが一気に変わる。
「転入生がお前とかこんな残念なことないよな!」
啓が言う。
「お前がまだ雨芽につきまとってるとか、ウザすぎてたまんねー!」
要君が負けじと言い返した。
―――ガンっ!!
突然机を蹴る音がして、一斉に沈まりかえる。
「早く席着けば?」
そう言ったのは、こっちを見向きもしない咲貴君だった。