意地悪王子とお姫様
「……涙、拭いてあげれない。あいつか啓に拭いてもらえ」
咲貴君は、屋上から出て行ってしまった。
「咲貴の彼女なのに、他の男にいくなんて有り得ない」
さっきまで、咲貴君と一緒にいた女が言う。
「いってないもんっ…」
「……うちに頂戴」
「…………え?」
「咲貴をうちに頂戴?」
そう言って、ニッコリ笑う。
びっくりして何も言えなかった。
頂戴………?
女の子は、笑って屋上から出て行く。
意味分かんないよ。
渡すはずないんだからぁ…。
もう、遅かったんだね。
咲貴君、すっごく怒ってた。
確かにあたしがしたことは、最低だ。
でも、本当に大好きなの。
いつもは、咲貴君が拭いてくれる涙もただ流れ落ちるだけ。