意地悪王子とお姫様
それから、毎日泣いていた。
そんな時、啓はいつも側にいてくれたんだ。
あたしも徐々に元気になっていって。
「……雨芽、俺さ引っ越すんだ」
「……え?」
突然、要君から声をかけられた。
一方的に別れを告げて。
それから、気まずくて話をしてなかった。
「…ひ、引っ越し…?」
なのに、いきなりそんなこと言われて何て言えばいいか分からなくなった。
「そ。俺、明日引っ越すんだっ!」
「……うそ…」
あたしは、小さな声で言った。
「…ごめんね。雨芽にだけは、ちゃんとお別れを言いたくて…」
そう言って、要君は気まずそうな顔をする。
なんで、引っ越しちゃうの?
なんで、あたしに言うの?
疑問がいっぱいあったけど、何一つ聞く勇気はなかった。