柘榴
「さあ、どうぞ。今夜は絶対にあなたに召し上がってもらおうと思っていたんですよ」

キシはアタシの様子に気付かず、ワインのコルクを抜いて、グラスに注いだ。

みがきぬかれたグラス。

高そうだな、と思えるぐらい余裕はまだある。

「どうぞ、召し上がってください」

ニコニコ笑顔で料理を進めるキシの頬を、アタシは力の限り叩いた。

ぱんっ!

「えっ…」

キシは心底分からないという顔をした。

「誰もこんな料理、注文していない。アタシは人肉は食らわないんだ。知っているだろ?」

「でもあなたは…自分の血は飲むじゃないですか」


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