柘榴
キシに手を引かれ、職員室の奥へ行く。

そこは受付事務所になっていて、数人の事務職員がいる。

「カガミさん」

キシが笑顔で声をかけたのは、大きなお腹をさすっている女の人だ。

あっ、知っている。

主に宣伝を担当している人で、30代の女性。昨年結婚したって聞いたけど、オメデタになったのか。

このお腹の具合だと、6ヶ月だな。

「あら、キシくん。それにヒミカちゃん。おはよう。どうしたの?」

おだやかで優しい声と表情。幸せいっぱいなのが、伝わってくる。

「カガミさんにこの間教えてもらった料理教室、とても気に入りましてね。ヒミカも通いたいと言って来たんですよ」


< 39 / 78 >

この作品をシェア

pagetop