柘榴
思わずテンションも声も低くなる。

「ええ、屋上には温室がありまして、野菜を育てているでしょう? そこの担当者が、最後の方です」

その言葉で、アタシは誰だかすぐに分かった。

「サガミ…先生?」

「ええ。和食部門で野菜料理担当のサガミ先生です」

知った名だった。…と言うか、身近な人だ。

アタシのクラスの担任でもあり、野菜料理を教えてくれる先生。

「でもサガミ先生は野菜担当なんでしょう? よく肉料理の教室のこと、知ってたわね」

「それはまあ、後程。本人の口から聞きましょう」

屋上へは階段を使って行った。

重い扉を開けると、生暖かい風が頬を撫でた。

目の前には透明な小屋がある。
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