柘榴
「最期の…僕のワガママ、聞いて…もら、えるか…な?」

「…何ですか?」

「キシ…くんと、し…あわせに…なって、くださ…」

アタシとキシは大きく眼を見開いた。

けれど…問いかける間も無く、先生は…命の灯を消してしまった。

アタシの頬から滑り落ちる、冷たくなった手。

笑顔のまま固まってしまった笑顔。

アタシの眼からは、次から次へと涙が溢れ出る。

そんなアタシに影がかかった。

…キシだった。

キシは何も言わず、先生のまぶたを手で落とした。

「キシ…」

「はい」
< 68 / 78 >

この作品をシェア

pagetop