柘榴
「…ヒミカ」

「何? キシ」

「一つ、ボクのお願い、聞いてくれませんか?」

「ん?」

アタシは顔を上げた。

優しく、そして悲しそうにキシは微笑んでいた。

「もしボクが、ヒミカよりも先に死んだら…その体を残さず食べていただけますか?」

「はあ?」

何を突拍子もないことを…。

「ボクはアナタが死んだら生きていけませんから、すぐに後を追います。けれどヒミカはボクを食べて、ずっと生きててください」

「どういうお願いよ、それ」

あんまりに勝手すぎる『お願い』に、思わず顔が歪む。
< 75 / 78 >

この作品をシェア

pagetop