好きだと言って。





「…な…に?」



エレベーターは、何故だか止まってしまっていて、辺りは真っ暗。


故障でもしてしまったのだろうか。



こういう時は、冷静になろう。


あたしは、ゆっくりと非常用ボタンを押した。



だけど……


カチ、カチ、カチカチ…


いくら押しても反応しない。

本当に壊れた?!

どうすればいいのよ?!


急に、平常心を保てなくなった。

不安でしかたがない。

とてもじゃないが、冷静に物事は考えられない。


このまま出れなくなったらどうしよう。

もしかしたら、いきなり落下するかも。


考えただけでゾッとする。


あたしは、静かにしゃがんだ。

なるべく振動を加えないように。


「…はぁ…」


まだ暗闇に目が慣れていないからか、本当に何も見えなくて怖い。



少しでも気持ちを落ち着かせたくて、壁に寄り掛かろうと後ろへ下がった。


ゆっくりと、ゆっくりと。

振動を加えずに。


………トン



(…え?)


何かに当たった。

壁ではない、少し柔らかなものに。


な、なに?

あたし、何にぶつかったの?


恐る恐る後ろを振り向いてみた。


(…あ)


暗闇に目が慣れてきたのか、はっきりと人の形が見えた。


そうだ、途中で人が乗り込んだんだった。


一人じゃないとわかった途端、不安が少し小さくなった。


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