好きだと言って。




「ぇっと…なんか、エレベーター止まっちゃったみたいですね」


うっすらと見える人影に向かって話しかけた。


話していれば、余計なことを考えないで済むし、このまま黙っているのも嫌だったから、知らない人に話しかけてしまった。



普段なら、絶対にしない。

相手が、どんな人かわからず声をかけるなんてありえない。


今は、そんなことを考えもせず口を開いた。


「…」

「…」



相手の人は、黙ったままだ。

どうしたんだろ。

話すの嫌、なのかな?

それとも、具合悪いのかな?



「あの…大丈夫ですか?」

恐る恐る聞いてみた。


「…何が?」






……………は?


ぶっきらぼうな、怪訝そうな声。


少し低い、男の子の声。


知っている、この声。





「…柳瀬…くん…?」


彼だ。

絶対に、こんな中でもわかるくらいに、あたしは彼を意識していたのかと、ふと思う。




「…だから?」


………むっかつく。


こんな時まで、こんな態度とんなくてもいくない?


学校では、あんなに爽やかな王子様やってるってのに、あたしにはこーいう態度ですか。


腹が立って、あたしは彼に背を向けて座った。







「…なぁ」


珍しく、彼からあたしに声をかけてきた。


彼もきっと、こんなエレベーターの中に閉じ込められてて退屈なのだろう。




「…あんたってさ、ブスだよね」


……………はぁ?!


珍しく、自分から口を開いたと思ったら、そんなことですか?!



「あなたも、かなり口が悪いんですね!学校とは大違い!」


猫かぶりめ!!


「は?口悪い?あんたに言われたくないんだけど」



暗闇に慣れてきたのか、相手の表情まで見える。


怪訝そうに顔を歪める王子がはっきりと。


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