好きだと言って。
3
淡い恋の日。
――――……
――………
「…はぁ」
夏。
暑いのはわかってる。
でも、明らかにここは周りよりも1度程気温が高いだろう。
昼休み。
混雑くらいするだろう。
誰だってご飯食べたいし、休み時間くらい他のクラスに行きたい。
そんなの誰だってわかってる。
あたしは、パンを買いに行きたいだけなのに。
廊下を通れないとはどういうことだ?
あるクラスから、溢れんばかりの人、人、人。
キャーキャーと騒ぐ女子に、肩身の狭い思いをする男子。
そして、あたしのように購買に行けない、通りたくても通れない通行人。
全ては、同じのクラスの王子様のせい。
地位、話し方、しぐさ。
柔らかな物腰に、この容姿。
“王子様”と呼ばれる彼。
綺麗な彼。
噂によると、学園長の孫だとか。
あたしだって、もう一度見たい。
もう一度この目で見たい。
できれば、会って話したい。
そんな夢はあるけど、こんな人込みの中掻き分けて王子様に話しかけるほど、あたしは勇者ではない。
入学から3ヶ月。
あたしは、あの日以来彼を目にしていない。
正しくは目にすることもできない。
彼の周りには、いつも女の子がいた。
彼が好き。
そんなんじゃないけど、もう一度彼を見たい。
よくわからない気持ちだった。
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