好きだと言って。





「ちょ…ッ」


奴の顔がさらに近づいてくる。


今から何をされるのかが怖くて、勝手に手が動いた。

だけど、そんな些細な抵抗も奴の手によって簡単に捩伏せられてしまった。


両手は奴に捕まり壁に押し付けられていて、しゃがんでいる状態のあたしには逃げ場がない。





「…怖い?」




唇が触れそうになって、奴はまたあたしから顔を離すと、愉しそうに口元をキュッと上げていた。



「まさか。」


負けじとあたしも強気で言い返す。


視線が重なり、お互い目を逸らさない。



 “逸らしたら負け”


何故だか、そんなことが勝手に頭の中にでてきた。



「アンタほんとに強いね」

いじわるく笑い、だけど視線は重なったまま。



「そんなところも気に入んないんだけど。」


と、嫌みっぽく付け足す。

「あんたってほんと意地の悪い奴。あたし、大嫌い。」


はっきりと言う。

奴の少し回りくどい意地の悪い言い方でなく、はっきりとストレートに言う。


あたしなりの“正直者”だ。


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