好きだと言って。
「おはよう和稀くーん!」
びくっ
なぜだかアイツの名前が出ただけで、ドキッとする。
アイツが、王子が教室に入ってきたってわかっただけでなぜだかドキドキする。
なるべく見ないように、なるべく気付かないふりをして本を読む。
なるべく自然に。
いつもと変わらない、嫌な女。
アンタなんか大嫌いなのに。
なのに、ちらりと横目で彼を見る。
やっぱり彼は、いつもと変わらず華やかな笑顔を見せていた。
…今日は、挨拶もしてくれない。
なんて思っている自分がいた。
いつもは、挨拶なんてどうでもよかったし、自ら彼を視界に入れないようにしていた。
なのに、なんでだろう。
あの日の、真っ正面からの言い合いに親近感が湧いてしまったのだろうか。
それとも、あの時彼の顔がいきなり近づいてきた、あの瞬間があたしの神経でも狂わされたのだろうか。
あたしは絶対違う。
あの時みたいな感情は、抱いてなんかない。
絶対に。
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