好きだと言って。


中学の復習で、“あなたに会って……”という文をお互いに言い合うときだった。



『I'm happy to see you』


発音よく笑顔でそう言った王子に、あたしも似たようなことを言おうとは思ったんだけど…



『あぃ、アイアム、ぐ、ぐ…アンぐりートゥーsee you』



ごめんなさい、英語苦手で……


という気持ちと、どこかに邪念があったのか。


グラッドと言いたかったのに、なぜだか間違えて


“あなたと会えてムカつく”

と素直な英文になった。


いや、やっぱりわざとだったかもしれない。


胡散臭い笑顔と、発音のよい王子にムカついたからワザと言ったんだ。



『は…』



その時も、王子の笑顔が引きつったの覚えいる。


「はぁ…」



一体なにを言われるのだろうか。


隣の王子を横目で盗み見ると、女の子に笑顔で優しく勉強を教えていた。





あんな顔、あたしには見せないくせに。




そう思って、ハッとした。


ばか!いいじゃないか!
あんな最低なやつに、あんな笑顔されたって嬉しくないっつーの!



なのに、あいつが笑うたび、あたしの心は落ち着かなかった。


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