好きだと言って。
―――……
―……
キーンコーンカーンコーン…
なんだかんだで、今日一日中あたしの頭の中を占領していたのは隣の憎たらしい王子だった。
悔しいけど、あいつの影響力はハンパない。
人の頭の中を乗っ取ることができるらしい。
そうだ、そう考えるしかできない。
嫌いだと思っても、あいつのことを意識してることには変わらないんだから。
興味ない。
だから、感情を抱かない。
なんでそういうことができないんだろうか、とつくづく自分が嫌いになる。
「はぁ…」
鞄を手に取り、帰ろうと足を廊下へと向けた。
「和稀くん、ばいばーい」
今日もばっちりキマっていた原さんが、王子に挨拶をする。
「また明日ね」
後ろで爽やかな声。
うげえー…。
気色悪い。
なんだ、あれは。
内心、ヘドを吐きそうなくらい。
みんな早々と足を動かし、教室から人がいなくなっていく。
あたしも帰りたい。
帰ろうとはしたんですよ。
原さんが帰ろうとする前に、帰る準備はできていたし、席だって立っていた。
なのに。なのに。
この男のせいで、あたしは帰れない。
帰ろうとしたあたしの行く手を省く男のせいで。
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