好きだと言って。
「は…?」
座ったまま、教室を出ようとするあたしの手を掴むのは王子。
ゆっくりと手が離れたかと思えば、今度は指と指の間に指を絡める。
「ちょ…っ」
まるで恋人たちが繋ぐような形に、あたしはカァッと頬が染まる。
いきなりのことに、動揺が隠せない。
優しく指と指が絡まる。
「っ…」
ぱっつん気味の前髪が揺れ、ギュッと目をつぶった。
「や、」
そう言葉を漏らしたとき、ガタンと王子が席を立つ。
「おい、ぱっつん」
「ぱっつんじゃない!!」
平均身長より少し大きめなあたしでも、180以上のスラッとしたこの男には嫌でも見上げなければならない。
「顔真っ赤。免疫なしとか?」
っハ!とへりくだるような冷笑に、カチンとくる。
「だ…っ!だったら悪い?!どうせ彼氏いませんよ!」
と、そこまで言ってからしまったと思っても遅い。
墓穴掘った。
完全なる失体。
「そういや、お前が男と話すのあんま見ないな」
「に、苦手なのっ。女子中、だったから」
そう思っても、もう口は止まらない。
自分のことをべらべらと人に話すのなんて、嫌いなのはずなのに。
「て…っていうか!手!」
「は?」
「手!離してっ」
あたしは、ほとんどパーの状態なのに、こいつがギューッと握ってるせいで未だ繋がれたままの手と手。
なにを考えているのかさっぱりわからない。
「じゃあ…三つ」
「は…?」
「三つ、俺のいうこと聞く?」
「…意味わかんないんだけど」
「頭わりーな。できたら、この手離してやるってこと」
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