好きだと言って。
ギュッと目を瞑ると、王子から小さくため息が漏れた。
え…。
すると、さっきまで腰に回っていた手が離れ、体を起こした王子。
両手を体より後ろに置いていて、肩が上がった状態で俯いている。
「ごめん…意地悪した。」
「は…?」
いきなり謝りだした。
本当になんなんださっきから!
こんな王子は見たことない。
こんなこと、初めて言われた。
「だから、付き合えってば」
「あたしっ…キーホルダー取りに…っ」
立ち上がろうとすると、中途半端な体勢で腕を掴まれた。
動けない。
王子があたしを見上げてる。
綺麗な顔。
頬が少しだけ紅くて、いつもよりなんだか色っぽい。
濡れた瞳は、あたしだけを映してる。
形のよい唇が動いた。
「…俺が、忘れさせてやるよ。」
「えっ」
掴まれた手首は、さっきよりも少し強く、王子の方へ引っ張られた。
下から王子の唇があたしを捕らえたのは容易かったようだ。
「…っん?!」
ファーストキスは、大嫌いな王子とだった。
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