好きだと言って。



ポタポタ…


蛇口から出てくる水とは違うところから、水滴が出てきた。



あ、あたしの涙か。



思ってたより冷静だな、あたし。



晴くんの声が、笑顔が忘れられない。


今でも、こんなにあたしは…




そう思うと、いても立ってもいられなくて、急いで階段を駆け下りた。



転びそうになりながら思う。


あんっのバカ男のせいで、大切なキーホルダー見つかんなかったら責任とってもらうんだから!



目尻に涙を浮かべて、落ちたであろう中庭を必死に探した。


両膝を地面につけて、這うように探した。



それなのに、キーホルダーらしきものは一つもなかった。



「ウソでしょォ…」



ヤバい。

また涙が…。



「…グスッ」



涙を急いで拭って、また探した。


きっと見つかる。

探せば絶対あるもん!



指と爪の間に土がたくさん入ってしまったけれど、あたしは手を休めることなく探した。


なかなか見つからなくて、周りを大きく見渡すと、目の前に小さな草村があった。



もしかして、あそこ?



もう夕日で辺りがオレンジ色。

少し探すのが大変そうだけど、もしかしたらあそこにあるのかもしれない。



そう思って、足を進めた。



「…わっ!」


手首を後ろから誰かに掴まれた。


本日何回目だろーか。



「…っにしてんだよ。」


王子に強く掴まれたのは。


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