好きだと言って。



言ってから、急に冷や汗をかいた。


王子の顔が見れない。



「あ…その……」



頬が熱い。


頬が紅潮してるのは、自分でも十分わかった。


それに、顔の筋肉がひきっつって、上手く笑えない。


セロハンテープとかが貼られてるみたい。



「んなこと知ってるよ。」



王子が言ったのは、あたしの言った「大嫌い」に対してだった。


でも、あたしが“しまった”と思ったのは、この男のことを不覚にも「王子」と呼んでしまったことにだった。


絶対、そこにつっかかってくると思った。


周りからもそう呼ばれていることを知って、いい気になっているこの男のことを、あたしも実はそう呼んでいるとバレたのだから。


気に入らないあたしが、自分の思い通りにならないあたしが、“王子”なんて呼んでたから。


もっと意地悪言われるかと思ったのに…



なんだ、その傷ついたような顔は。



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