好きだと言って。
「なぁ…」
「ん?」
王子の大きな瞳があたしを映す。
真剣で、それでいてどこか切なそうに見える。
つい最近まで、あたしを苛めていた人には見えない。
いつもみんなに笑顔を振りまく王子に見えない。
「忘れろよ。そいつのこと」
「は…?」
わけがわからなくそう言うと、ちらりとあたしの手のひらにあるキーホルダーに目をやる王子。
もしかして…
と思ったから、あたしは返事に困った。
まさか、嘘でしょ。
冗談かなにかに決まってる。
だって、王子だもん。
こいつの本性を、あたしはよく知っているじゃないか。
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