好きだと言って。




……パシンッッ





乾いた音。


耳にいつまでも残る。



「っ!」


目の前で、美しい顔が小さく歪む。


頬が少しだけ赤くなり、王子はそこにそっと目をやり、再びこちらを向いた。



「…最低。」


少しでも、怯んでしまったことを悟られたくなくて、とっさに出た言葉だった。


「…逆らうんだ?」


冷たく鼻で笑う彼は、やっぱり怖くて仕方なかった。



「あんた、嫌い。」


そう言って、王子は再びあたしに近寄り手を伸ばしてきた。


伸びた腕は、あたしの顔のすぐ横にあてて、じっとあたしを見つめる。


逃げられない。


後戻りは無理。


「アンタもコイツいじめよーよ。たのしいだろ?ゲームみたいでさ。」


「最っ低…!」



自分がしていることを、わかって言ってるの?


目の前で、ボロボロな姿のこの人を見て、楽しんでる…そんなことって…。


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