好きだと言って。
初めて遭遇してしまったいじめの現場。
初めて人を叩いてしまった。
震える手。唇。
麻痺するのは、頬の筋肉。
自分より背の高い王子に。
自分よりがっちりとした身体に。
なにより、あたしは目の前の冷め切った瞳をした王子に膝が震えていたんだ。
ちょっと数秒まで王子様だったのに。
今目の前にいるのは、ただのいじめっこじゃないか。
そんなこの男を、晴くんと重ねてたなんて。
少しでも好きだと思ってしまったなんて。
ぎゅっと目をつむった。
だって、あまりに信じられなかったから。
学園の王子様が、こんなことするなんて…
王子がその場にいなくなるまで、あたしは立ち尽くしているしかなかった。
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