好きだと言って。



叩いたあたしに何も言わずに去っていった王子がなにより怖かった。



すれ違う時見た王子の瞳は、どこをみているからわからないようなものだった。


ガラスみたいだった。


綺麗だけど、儚く壊れやすい。


本物の輝きかわからなかった。


闇を抱えているようにも見えた。


王子の歪んだ性格。



次の日、教室ではあからさまに王子はあたしを無視する。



当たり前のように、みんなにわからないように悪態をつく。



あたしにはわかる。


その笑顔の下には、とんでもなく恐ろしい顔があることを。



「…いつまで、ここにいられるかな?」



すれ違うとき、低く小さな声でそう言ったんだから。



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