好きだと言って。


理由は、


王子はあたしのことが嫌いだからだ。


それに比例して、あたしも王子が嫌い。


自然と、あんな態度をとられると好きにはなれない。

王子がどうしてあたしを嫌うか一つだけ心当たりがある。


あの日まで、この気持ちは比例していたはずなかった。



王子とあたしの気持ちの違いは、王子は初めからあたしを嫌っていたみたいだけど、あたしは王子が好きだったってこと。



これだけは、変えることのできない事実であって、今更思い返すようなことではない。


王子が嫌うのは、自分の思いどおりにいかないもの、自分に逆らうもの。


つまり、あたし。


あたしは、王子が好きだったけど、あんな王子の要望は応えられなかった。


王子は、普段優しくて品があるが、けして穏やかなものではなかった。


逆らうものには、容赦なく罰を与えていた。


あたしは、その罰を下すよう言われた。


正しくは、命じられた。


あたしは、自分が正しいと思うようにしただけだった。




あたしは、その子を助けてしまったんだ。



それから、王子はあたしと目を合わせなくなった。


あたしだって合わせたくなかった。


あたしが王子を嫌う理由、王子があたしを嫌う理由はこれだった。


だけど、

あたしと隣になってしまった席を変えなかった。


王子が一言、「席を変えてほしい。」と言えば、簡単にあたしから離れた席になれるのに、なぜか王子はそうはしなかった。

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