My girl



――深い藍色に染まり始めた空。

あの角の向こう側。



「………っ」


微かな風に運ばれた香り。


桜の、――香り。



「おい……待てよっ」


俺は、あの日と同じように……


“何か”に惹きつけられるように走り始めていた。



まるで“まだ”知らない、何かを求めるように――。



その道にようやくたどり着くと



まだ光が差していない、
そこに広がるのは



――漆黒の闇。


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