My girl


気のせいだと思いたかった。


いや
気のせいだと思い込もうとした。


背中を這うような、冷たく、この靴を柔らかく受け止める地面のような湿った視線に――


ついに俺は後ろを振り返ってしまった。



「――…ッ」

蘇るのは、恐怖だけ。


昔、上映されていた映画のような

捕まってしまったら
まるで“死”を連想してしまうような、命がけの追いかけっこ。


――ゲーム。



美桜を抱いた腕に、無意識に力が入る。


フェンスの向こう。


じっと、こちらを見る男は



「……ミオ」

美桜の名前を呼び、ニッと笑ってみせた。


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