My girl


「……あ…っ、」

美桜の瞳が恐怖で大きく見開き、口からこぼれる息

――呼吸が乱れていく。



「美桜、大丈夫」

俺がいるよ。


アイツには聞こえないように、小さな声でそっと話しかける。


美桜は涙をたくさん溜めた瞳で、心配そうに俺を見上げた。




……でも、何で今さら?


話し合いは、済んだって聞いた。



美桜と咲良さんは、こっちに住むことと――

お兄さんは大学に通う為、一人暮らしをすることになったって。




「今さら何の用ですか?」

あの夜、美桜をさらったあの日。


俺がこの人を挑発してしまったおかげで、大変な目にあった。


俺だけなら、まだしも……

美桜も危険な目に晒してしまったんだ。



終わりが見えない、――追いかけっこ。

出口が閉ざされた迷路のような。


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