My girl


逃げても、逃げても“ゴール”みたいな“完全に”安全な場所なんて、どこにもなくて。



ラブホテルに逃げ込んだのも
一時的な目くらましにしかならない。


あの時に逃げ切れたのは、ただ運が良かっただけ。


夜だったのと……駅周辺、ネオンの街のような独特な入り組んだ路地。



ここは学校だ。

下手な真似して、この人を挑発したら……今度こそ逃げられない。


それどころか、学校中が俺と美桜目の前で笑うこの人物との関係を怪しむだろう。



「別に……ミオの様子を見に来ただけだ。楽しそうにやっているかって」


――イヤらしい目つきで、美桜を見るな。

ニヤニヤしやがって。


でもここは……抑えなければいけない。


――挑発してはいけない。



「美桜を保健室に連れて行かなきゃいけないので、じゃあ」

軽く会釈をして、くるりと前へと向き直る。


まだ怯えるように必死にしがみついてくる美桜を安心させたくて。




「美桜は俺が守るよ」

背中に突き刺さる冷たい視線を感じながら、俺は保健室へ急いだ。





――『ミオ、また会いにいくから俺の…ミオ……』


フェンスの向こう側の呟きは

未来、ましてや美桜の耳に届くことなく……


空に消えていった。


< 220 / 311 >

この作品をシェア

pagetop