My girl
――世の中で1番、残酷な言葉。
俺はその言葉を、父親に言わせてしまった。
幼心に感じた違和感は、本当だった。
仲良く寄り添ったふたり。その背中が残酷な程、黒く塗りつぶされていたこと。
愛している人から、愛されない苦痛。
愛している人が“誰か”を愛していたとしても、
オヤジは確かに母さんを愛していたんだ。
「母さんには……好きな人がいたんだ」
「美桜の――父親、だろ?」
バーテンダーだった、美桜の父親を好きだった母さん。
でも……、母さんはオヤジと結婚した。
それは――
「その人にも、愛している人がいたから」
美桜の父親は、咲良さんを愛していたんだ。
だから母さんは――オヤジを選んだ。
全く愛していなかった訳じゃない愛そうと“していた”はず。
身代わりの恋。