My girl
「未来と美桜ちゃんのことを知るまでは、真剣に考えていた」
――結婚のことを。
不意にこぼれたオヤジの言葉が、まるで冷たいナイフのように突き刺さり、胸に痛みが走る。
「今は……息子の幸せを願う」
空っぽで冷え切った心に、何か温かいものが流れ込んでくる感覚。
“満たされる”
って、こういうことなんだ。
“愛される”
って、こんなに温かいんだ。
「この前作った春の新作カクテルまだ試作の段階だか」
「――ああ、頑張るよ」
オヤジは咲良さんに、俺は美桜にカクテルに気持ちを注いで。
桜吹雪と、サクラハナビ。
淡いピンクの花びらに、気持ちを静かに乗せて――。
春は、もうすぐそこまで来ているんだ。