My girl
駅から少し離れた場所にある、桜の並木道。
見渡す程、長い距離の中植えられたどっしりとたたずむ木。
「……あ、」
その中の1本、茶色く埋められた景色の中に僅かにピンクをした。
桜の……つぼみ。
茶色く膨らんだつぼみ、黄緑色に包まれたその淡いピンク色は
春の訪れを感じさせた。
俺の心は今、こんなにも寒いのに――…。
帰ろう、もしかしたら家に帰って来ているかもしれない。
桜のつぼみに、僅かな希望をもらいながら俺は元来た道を戻った。
だけど……その希望はあっけなく黒く塗りつぶされる。
「美、桜……」
家にある美桜の荷物がほとんどなくなっている。
服や小物に、俺の部屋に置かれたままだった――赤いリボンまで。