My girl
「食欲は……ある?お腹空いてるでしょ」
仕事の最中にも関わらず、常に咲良さんは俺を気遣ってくれた。
「そうね……こういう時は、お粥か野菜スープがいいかしら」
昨日の夜食べたものを、全部吐き出してしまってから、何も口にしていない。
「あっ!ホットミルクはどう?」
――昔、旦那に教わった特別な作り方があるの。
「ありがとう」
なぜかこの時、この言葉が心に引っかかったんだ。
ツキン……と、この言葉を心が弾くような。
グラスに落とす、氷のように。
僅かな冷気を伴いながら、消えていく言葉。
美桜でいっぱいのこの頭は、それ以上考えるのを拒んでしまった。
そして……運ばれたホットミルクから重大な事実が綻び始める。
「また何か食べたいものがあったら遠慮なく言って」
そう言って、咲良さんはバーに消えた。
カップに注がれたホットミルク。
温かい湯気が鼻をくすぐる。