My girl


クンクンと鼻を近付けて匂いを嗅いでみる。

何かが入っているのは、分かる。


それを母さんに聞いてみると。



「あら、よく分かったわね」

ほんの、1滴……よ。


最近お父さんから教わったの。

カクテルの香り付けに使われる、モノなんですって。


あの頃とまったく同じ会話。


確かこの後、ホットミルクを飲んだ……はず、なのに。





口が、勝手に動きだす。



「ねぇ、……これは本当にお父さっ…んぐっ」

間一髪のところで、どうにかその言葉を呑み込む。


信じられない、といった表現で鏡を見つめた。


いつしか“自分”は、見覚えのある顔へと変貌していく。


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