My girl


「ある人と出会ってね。その人から教わったの」

――私とあの人との出会いは、春だった。





――『うぅ……ふぇっ、』

満開の桜の木の下で、小さな手で顔を包んだまま下を向いて泣いている女の子。

お父さんと未来は知らないのよ?


3人でお花見に行った時、ふたりとも寝ちゃうんだもの。


黙って母さんの声に耳を傾ける。



――『どうしたの?あら……迷子になっちゃったのね』

細くて長い髪をなびかせながら、その女の子はやっと私を見てくれた。


――『おっ、お父さんと……お、兄ちゃんとっ、はぐれちゃったの……』

――『お母さんは?』

その問いに、女の子は俯いてこう答えた。


――『しっ、仕事が……忙しいって…来れなく、なったのっ』

――『そうなの……』

一緒に探しましょ?
お父さんもお兄ちゃんもきっと、心配してるわ。


そう言って、小さな手を引き始めた。


しばらく歩いていると、血相を変えたひとりの男の子がこちらに向かって走ってくる。



――『……ミオ!』

――『お兄ちゃっ……!』


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