My girl


本当は、こうしたかった訳じゃない。

衝動的に、気が付けば私はこう言ってしまっていた。



みおちゃんの言う通り、お母さん……奥さんは仕事の忙しい人で。



あの人は、私が結婚をしているなんて知るはずもなく。

会うことは、簡単だった。


ただ私さえ、スケジュールを合わせれば。


初めての食事で、私はあの人がバーテンダーであることを知る。

私に話してくれるお酒や、カクテルのこと。

どれも興味深くて、私を夢中にさせてくれた。


けれど、私にはそんな知識はなくて。

話に付いて行くには、勉強が必要だって思った。



――『最近の美空は、お酒に興味があるんだね』

――『……あっ!う、うん……そうなの』

――『でもどうして急に?』

――『と、友達の旦那さんがバーテンダーで、よくお話を聞かせてくれるの』


嘘を嘘で突き通して。

嘘で固めていく毎日。


そんな私を見て、お父さんも興味を持ち出して。



――『バーテンダーか。それも、いいね』

ある日、お父さんがこんなことを言い出したんだ。


――『今からでも……遅くないかもしれない。目指してみるよ、バーテンダーを』

愛していた人を、2度傷付けることになる。


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