My girl
――『そしてある日……事故は…起き、て…――し…まっ…』
「母さん……?」
目の前の視界がグラリと揺れ。
かと思った瞬間
桜吹雪みたいな淡い色が視界いっぱいに広がって。
その光景が、俺の意識を少しずつ奪っていく。
「待って……母さ……ん」
――行かないで。もっと聞きたいことがたくさんあるんだ。
手を伸ばしたけれど、母さんの温かい手に触れることは出来なかった。
「……ん、…」
目を覚ますと、懐かしい部屋が視界に入り込んでくる。
眠っていたのは、ほんの数時間なのに、今の“現実”の部屋を懐かしいと思わせる程。
俺は長い間夢の中にいたんだ。
カーテンを揺らす風。
鈍色の月を不規則に、俺の目に届けてくれる。