My girl
◆桜ノ花ビラ
「美桜、今日も月がきれいだよ」
ぽっかりと丸く浮かぶ月に話しかけた。
サァ――…ッと、柔らかい風がカーテンを一層強く揺らす。
風と共に飛ばされてきた、何か小さくてフワフワしたもの。
「……桜」
その花びらは、まるで俺の手の中に落ちてくることを知っていたように、スルリと舞い込んだ。
手のひらに落ちた、一枚の淡い色を見つめていた時だった。
部屋が少し暗くなる。
きっと雲が月を隠してしまったんだろう。
そう思って顔を上げた時――…
ベランダの向こう。
月の光を背に受けている、ずっと俺が待ちわびていた影。
長い髪を、風が弧の形に変えていく。
逆光で、一瞬表情は分からなかったけど。
そんなの構わずに、体が勝手に動いて。
「美桜……っ」
気が付いたら、その小さな体をきつく抱きしめていた。
夢じゃないようにって
きつく――きつく。