My girl
たった2日だけだったとしても、早くその細い体が元に戻れるように。
その日は美桜の為に、普段はあまりしない料理を頑張った。
「明日からは学校だね」
美桜のことは、学校側にももちろん志月にも、体調を崩した単なる風邪とだけしか言っていない。
――私たちにあった出来事は誰にも知られずに、また日常に戻るんだね。
「何か変な感じ」
カーテン越しに見える少し欠けた月を見つめる美桜。
その瞳に、あの光を閉じ込めて。
「俺がいるよ」
――ねぇ、俺もその中に閉じこめてよ。
二度と出て来れないように。
「ホットミルク、作ってくるよ」
こんな夜にふさわしい、眠れない夜限定の秘密のレシピ。
コトコトと鍋で温めて、秘密を、1滴。
ついでに俺の気持ちも混ぜておこうか。
「――美桜」
カップを渡すと。
「みゃー」
その声と共に振り返るのは
片手を丸めて、ネコの鳴き真似をしてみせた美桜。
――私、ネコじゃないよ。
月の光で生まれたものは、髪の長い女の子の影。
‐END‐