Tea Time Romance
《1》Mint, Linden Flower, and Rose

1.

その女(ひと)に出会ったのは僕が大学4年の夏、カフェテラスでアルバイトをしていた時の事……

 近年の不況の中、どこの会社がいいなんて贅沢は言っていられない。
 何となく入った大学、何を目標に勉強してきた訳じゃない。特に思い入れのある職業なんて決めていないので、早々に内定をとりつけた。

「……ところで君、今年の夏は何か予定はあるかい?」

 突然人事部の面接官にそう言われ、僕は面喰らった。
 まさかこれも試験の一つじゃないだろうな。僕は疑心暗鬼になりながらも話を聞く。

「いやぁ、系列のホテルで臨時のアルバイトがなかなか集まらなくてな。
 どうだ、時給ははずむからやってはくれないか」

 幸い、後は卒論を残すのみ。とりたてて予定など入っていないので、秋口まではバカンスとしゃれ込もう。


 そうして僕は、海沿いのホテルでアルバイトをすることに決めたのだ。

< 1 / 30 >

この作品をシェア

pagetop