Tea Time Romance
 時計の針が三時近くになり、僕は持っていた彼女の帽子をカウンターに置いた。

「なんだ、もう行くのか? 直接渡してやればいいのに」

「……駄目ですよ、彼女に会ったら俺……」

「そうだな、縁談がぶち壊しになって、変な噂が立ったら大変だ」

 思わずマスターの顔を見る。笑い転げるマスター。

「大丈夫だよ、俺は口が堅い方だ。
 ……恋愛は誰にも止められないしな」

 僕は席を立ち、荷物を抱えた。

「もう九月……夏も終わりだな」

 マスターの言葉が示すように、日差しはすでに秋の気配を漂わせていた。
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