Tea Time Romance

3.

 翌日、また彼女は変わらずに店へと入ってきた。僕の前を通り過ぎる時、さりげなく彼女は呟いた。

「……昨日と同じものを」

 僕は少し驚いたけれども、気持ち微笑んだような彼女の唇を見逃しはしなかった。

 前の日と同じように、紅い花弁を浮かべたハーブティをテーブルへと運ぶ。いつもとは違い、代金を直接僕に手渡しながら彼女は笑顔をこちらに向けた。

「ありがとう」

 その優しい笑顔が、僕の心をくすぐった。

 二時間ほどして、海風が強くなり始める頃、読みかけの本を閉じて彼女は席を立つ。いつものように。

 彼女の姿が視界から消えた後、ティカップを下げる。
 キッチンでカップに残った花弁を取り出し、ダストコーナーに放り込もうとしたが、つまんだ指先の感触がそれを止めさせた。

 僕は胸ポケットからハンカチを取り出し、その花弁を包んだ。
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