甘い魔法―先生とあたしの恋―
「……頭痛い」
朝からひどい頭痛があたしを襲っていた。
毎度の事ながらの、泣きすぎが理由の頭痛に頭を抱える。
せっかく生理痛がよくなったのに、今度は頭痛って……。
だけど、そんな頭痛もいい加減慣れてきていて。
それが逆に情けない。
制服に着替えて頭痛薬を持って部屋を出ようとして……手が止まる。
昨日の事が頭に浮かんで、ドアの前で唇を噛みしめた。
昨日、あたしが泣きやんで部屋に戻ったのは22時半。
何時に寮に帰ってきたかはよく分からないけど、泣いてる間……ずっと矢野の腕の中にいて……。
部屋に戻ってきても、自分の身体から矢野の香りがするほどに、長い時間ずっと抱き締められてた。
昨日は何も考えられなかったけど……。
冷静になって考えてみると、結構、なんか、ちょっと……。
今頃になってドキドキし始めた心臓に、顔が合わせにくい。
「……」
でも、矢野は先生だし。
先生だから、先生って立場であたしを慰めてくれてたんだろうし。
あの行為に深い意味なんて絶対ないし。
食堂行ってご飯食べないと薬飲めないし……。
それに、ほら。あの矢野だもん。
女なんか切らした事ないけど? って聞こえてきそうな顔してる矢野だもん。
あんなの気にも留めてないって。