甘い魔法―先生とあたしの恋―


「……頭痛い」


朝からひどい頭痛があたしを襲っていた。

毎度の事ながらの、泣きすぎが理由の頭痛に頭を抱える。

せっかく生理痛がよくなったのに、今度は頭痛って……。


だけど、そんな頭痛もいい加減慣れてきていて。

それが逆に情けない。


制服に着替えて頭痛薬を持って部屋を出ようとして……手が止まる。

昨日の事が頭に浮かんで、ドアの前で唇を噛みしめた。


昨日、あたしが泣きやんで部屋に戻ったのは22時半。

何時に寮に帰ってきたかはよく分からないけど、泣いてる間……ずっと矢野の腕の中にいて……。


部屋に戻ってきても、自分の身体から矢野の香りがするほどに、長い時間ずっと抱き締められてた。


昨日は何も考えられなかったけど……。

冷静になって考えてみると、結構、なんか、ちょっと……。


今頃になってドキドキし始めた心臓に、顔が合わせにくい。


「……」


でも、矢野は先生だし。

先生だから、先生って立場であたしを慰めてくれてたんだろうし。

あの行為に深い意味なんて絶対ないし。

食堂行ってご飯食べないと薬飲めないし……。


それに、ほら。あの矢野だもん。

女なんか切らした事ないけど? って聞こえてきそうな顔してる矢野だもん。

あんなの気にも留めてないって。



< 104 / 455 >

この作品をシェア

pagetop